「今までの30年で一番うまくできたセミナー」

 

独立して間もないころ、ある企業で新入社員研修をすることになりました。

そこの総務部長さんが、「マナーも教えてやってくださいね」とおっしゃったんです。

僕は「はい」とは言いましたが、マナーなんて電気技師(サラリーマン時代)に出来るわけがないんです。困りました。

それで実際にやったことは、「僕にはマナーはできない。今日はみんなでマナーについて、自分たちで学んで欲しい」。そう言ってマナーの本を2冊(5人グループに1冊づつ)与えて、自分たちでカードに書いて模造紙の上に並べてもらいました。

「ノックは3回」「車での偉い人の席は右後ろ」・・・などのカードがたくさんできました。それをグループにまとめてもらいました。ちなみに僕は何もしなかったんです。

このセミナーの後、1月ほど経ってその会社に行きました。

その時の総務部長の言葉は、「先生、何をしたんですか?新入社員はみんな一生懸命マナーを実行してます。」でした。

教えなかったのにみんなやってくれてるんです。

このとき、「そっか、セミナーって教えちゃぁいけないんだ。教えるんじゃなく、気付いてくれる場を作ればいいんだ。」と思いました。